意外と知らない!?印刷とプリントの違いとは
「印刷」のことを英語で「Printing」というように、印刷とプリントは同じ意味で用いられることが多い言葉です。しかし、印刷とプリントには違いがあり、それぞれメリット・デメリットがあることは意外と知らない方も多いのではないでしょうか。この記事では印刷とプリントそれぞれの特徴と違いについて詳しく解説していきます。
印刷の特徴
印刷とは、インクによって紙などに文字や絵、写真などの画像を写すことを指し、でき上がったものを印刷物といいます。印刷全体の特徴として、版を作成するなど複数の工程を経るため時間がかかり、同じものを大量に印刷するのに向いている点が挙げられます。
印刷機では、印刷するデータをCMYK(シアン・マゼンタ・イエロー・ブラック)の4つの色に分け、それぞれの版を作り、インクを重ね合わせることで印刷を行っています。印刷方式は「凸版」「凹版」「平版」「孔版」の4つに大別でき、利用用途に応じて最適な印刷方式が採用されています。
凸版印刷
最も歴史があるのが凸版印刷で、15世紀中頃に発明されました。活版印刷などもこの方式で、版の凹凸を利用し、凸部にインクを付けることで転写します。味わいのある仕上がりになりますが、手間やコストがかかることから、近年はあまり見られなくなりました。
凹版印刷
凹版印刷も版の凹凸を利用する方式ですが、凹部に付いたインクの量で転写するため、グラデーションや微妙な線を表現することに長けています。錯覚を利用し濃淡を表現するグラビア印刷もこの凹版印刷の一種で、写真集などに向いています。
平版印刷
凹凸のない平らな版を用い、水と油が相互に反発し合う性質を利用して印刷する方式です。オフセット印刷もこの平版印刷の仕組みを利用しており、大ロットの印刷をスピーディーに行える、主流の印刷方式のひとつです。
孔版印刷
版にメッシュ状の穴を開け、その穴からインクを押し出すことで印刷する方式です。スクリーン印刷もこの孔版印刷にあたり、紙だけでなくさまざまな素材に印刷できるメリットがあります。
プリントの特徴
英語で「印刷」の意味を持つプリントですが、印刷業界では明確に使い分けられています。アナログ方式での「印刷」に対し、デジタル方式の印刷全般を「プリント」といいます。印刷業界では、印刷と区別するため、プリンターで印刷することを「プリント」や「出力」と呼ぶこともあります。
プリンターでは版を作成しないのが大きな特徴で、パソコンのデータを直接インクジェットプリンターやレーザープリンターに送ることで、すぐにプリントできます。そのため、1枚ずつ異なる内容をプリントするのに向いています。プリントにもさまざまな種類がありますが、ここでは代表的なプリント方式を3つご紹介します。
インクジェット方式
液体のインクを使用し、紙にインクを吹き付けることで印刷する方式です。色の再現性が高く、繊細な色味を表現することが得意で、家庭用のプリンターでも広く使われています。
熱転写方式
熱転写方式は「サーマルプリンター」ともいい、熱によって印刷を行う方式のことです。レシートプリンターもこの仕組みを利用しており、業務用として幅広く用いられています。
昇華転写方式
「昇華インク」を搭載したプリンターを使用し、熱でインクを印刷したい素材に染み込ませる印刷方式です。ポリエステル素材に向いており、のぼり旗に使用されています。
コストとスピードに違いがある
ここまで印刷とプリントそれぞれの特徴をご紹介してきましたが、どのように使い分ければよいのでしょうか。
印刷
印刷は同じものを大量に刷るのに向いているため、チラシやカードなど、大ロットのものにおすすめです。また、大量に刷る場合にはコストも低く抑えられます。印刷に適したデータにするための処理を行った上で印刷するため、再現度が高いというメリットもあります。一方、版を作る工程が必要となるため、完成までに時間がかかるデメリットがあります。
プリント
プリントは1枚ずつ違う絵柄を印刷するなど、小ロットの印刷に向いている特徴があります。また、プリントでは版を作成せず、短時間で制作できるため、急ぎの案件などにおすすめです。ただし、印刷に比べると仕上がりの再現度が低いデメリットもあります。少ロットではコストが低い一方、大ロットをプリントするのはコストが高くなるため不向きといえます。
このように、印刷とプリントはコストとスピードに違いがあり、それぞれ得意とする用途が異なります。必要な部数や納期、印刷する素材や必要とする再現度の高さなどによって使い分けるとよいでしょう。
印刷物の仕上がりは印象を大きく左右しますので、最適な印刷方法を選びたいですよね。版を作る「印刷」と、直接出力する「プリント」には明確な違いがあり、それぞれのメリット・デメリットを把握し賢く利用することが大切です。また、印刷とプリントはさらに細かく方式が分かれているため、印刷物や目的に応じて選択する必要があります。大量に刷る場合は印刷、少ない量をすぐに印刷したい場合はプリント、と簡単に覚えておくのもおすすめです。用途に合った印刷・プリント方式が分からない場合は、印刷業者に相談してみるのもよいでしょう。